美容整形に対する誤解

美容整形に関する誤解で一番大きなものは、まるで仮面を被るように誰かそっくりの顔に変身出来るという幻想だろう。これはあきらかにフィクショナルな映画・TV・小説・コミックの影響がある。完全な絵空事として楽しむ分には害も無いが、本気にされてはちょっと具合が悪い。美容整形とは断じてそういうものではない。

美容整形は基本的に、患者の体質・体型・骨格などをベースにアレンジしていくものであるから、極端に元のキャラクターから外れるオペは想定していない。美容整形とは、「A」というキャラクターを「X」というキャラクターに変貌させるものではなく、あくまで「A’」もしくは「スーパーA」を目指すものなのである。その意味においては、無論オリジナルの容貌よりはるかに「美しく」なることは可能だし、結果的にオリジナルのフェイスとは全く印象の異なる「別人」になることも可能ではある。しかしそれは、あくまでオリジナルの個性を土台として積み上げられたものなのであって、大本の「A」という人物をこの世から消し去るためのものではないことを確認しておかなくてはならない。

美容整形に関する誤解として、この他一般に流布しているものに「極端に異なる体型への変貌」がある。無論技術として「脂肪吸引」に代表される痩身術は存在するが、度を越した処置は生命に関わる愚行であるし、そもそも本来の等身を変えることなど出来はしない。顔の輪郭にしても、丸顔の人間を極端に面長に変えたり小顔にしたりするためには頭蓋骨を削り取るより他無く、当然元々の脳容量より小型化することは不可能だ。美容整形外科医が最も重視するのは、美容整形手術の後、患者が何の支障もなく健康的な生活が出来ることに他ならず、この条件を満たさぬオペなど全て本末転倒と言わざるを得ない。

美容整形本来の主旨は、事故や疾病などによる容貌上の障害や欠損をリカバーすることであり、円滑な社会生活を取り戻すことにある。またそこから一歩進んで、極端な容貌上のコンプレックスや先天的欠陥を修正・除去することで、精神的な健康を獲得することにある。そして後者の動機で顔面に施される美容整形手術のほとんどがほんの些細なバランス修正による「プチ整形」であり、その目的の大部分がこの些細な修正で完了してしまうのである。まだ美容整形に関する技術が未発達であった前世紀のごとき「不自然な変貌」は、今日ではほとんど顧みられない。現代美容整形においては、いかに本人の個性を尊重し、その人が生来持っている美点を伸ばしていくかに力点が置かれているのである。

美容整形の実態があまり世に知られないまま長い歴史を過ごした一因として、日本における医療関係の法的制約が考えられる。TVで流れる美容整形クリニックのCMには、ご覧いただければ判るように、美容整形の医院で具体的にどのような治療が行われているのかを語るものは無い。というより、日本の法律ではTVコマーシャルに医療行為の内容を盛り込んではならぬという不思議な条項が存在し、ゆえにTVの美容整形クリニックCMは医院名を連呼することしか許されず、せいぜいイメージビデオ的範囲を超えることが無い。これでは「美容整形とはどのようなものなのか」を一般市民が知るすべは無いだろう。